窓を揺らす羽根にのる

厚木の飛行場から飛び立つ米軍機の爆音が
僕の部屋の窓を揺らす
ノイズだらけのテレビの音を消してしまう程
大きな爆音が僕をいらだたせる

六畳一間のアパートは
僕の城でもあるけれど
僕を閉じ込める牢獄でもある
君主は僕で 囚人も僕
思い通りにならない事を
外の世界に擦り付けて愚痴をこぼし
君主は囚人に唾を吐く

夢は東京にあると ふる里のみなに告げて
たまには帰ってくるからと嘘をつき
此の街に来たのが二年前
あのとき 確かに僕はふる里を捨てたのだ

父は諦めたふりをして
がんばってこいという
母は心配そうなひとみを向けて
いつでも帰ってきていいという
僕は何時も分かったフリをして
偽りのほほえみを浮かべて
ただ うなずくのだ

君主は平穏を望み
囚人は革命を望む

アスファルトの灼けた臭いに憧れていた
新宿をずっと美しい街だと思っていた
新橋のすすけた中年男を馬鹿にしていた
なによりも 何かができる気がしていた
この街にいさえすれば

米軍基地から飛び出す飛行機に乗って
知らない空を飛ぶ夢ばかり見る