歴史の足音

僕らは旅に出る時 何かを犠牲にする
それは 思い出であったり 故里であったり
或いは 恋人であったりするかも知れない

新しい何かを手に入れたいと欲する時には
古い何かは捨てなければならない
人が一生の間に 持てる荷物は
それ程多くはない
どんなに数多くのものを望んだところで
余ったものは 抱えた腕の隙間からこぼれ落ちていく

旅を続けると言う事は
何かを失い続けると言う事に他ならない
歩き続ける中で
人は成長し 多くを学ぶ
しかし それと同じくらい
失っていくものも多い
そしてある日突然気付くのだ
自分がもう過去の自分でない事に

しかし それを悔やむことはない
時間の流れの中で失ったものも
旅の途中で得たものも
生きるという意味を理解するために
必ず必要だから
そして 旅の途中で落とした荷物は
きっと 誰かが引き継いで
大事な財産になっているに違いない
僕らが旅を続けるのは
自分だけの為ではない
多くの荷物を 全ての人間で共有しながら
種族として歩いていくのだ

僕らが一歩足を踏み出した時
歴史を動かす 大きな足音が聞こえる