ネバダからきた人
その人はネバダからきたという
十年前の晴れた日曜日に彼女は颯爽とあらわれた
金色の髪に白いワイシャツ
碧眼を際立たせるかのような細いフレームの眼鏡
顔を近付けると 流れる血液の色さえ見えるような透明な肌
僕がはじめて見た、僕と違う文化をもつ人の姿
僕は彼女に「よろしく」と頭をさげ
彼女は口元を上げて僕に右手を差し出した
何百年もの間 この町は排他的で
同じ集落 同じ民族との混合をくり返し
何時しか固まりあった一つの意識の下に集結し
もはや 個人としてではなく民族として行き詰まっていた
彼女はそこにやってきた
有色人種である僕たちに囲まれ
彼女は何を思ったか
街を歩くだけで指をさされ
興味本意で顔を覗かれる
そんな町が彼女が選んだ場所
そして僕が生まれた場所なのだ
ネバダから来たその人は今でもこの町で暮らしている
僕は今日その町を捨てたのに
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