記憶の残骸
君の夢をみた
君は居酒屋のカウンターでたばこをふかしていた
僕は変わらない姿に 何の違和感もなく
いつまでも語り合った
時は流れて 君は同じ居酒屋で
その腕に愛の結晶を抱き
母親の顔をして 僕と笑顔を交わしあった
幸せな風景
いくつもの夜を超えて
幸せな時間を過ごし
僕たちは愛を何度囁きあっただろうか
二人の愛の時間は永遠だと信じて
その永遠は 目覚めた瞬間に 粉々に打ち砕かれた
僕の傍らに君の姿はなく
ただ 果てしなく広がるベッドの隙間が無情に存在して
君が抱く事ができなかった愛のかけらが 静かに寝息をたてている
君よ 君は 何処迄僕をさいなむ
君よ 僕は 何時迄悲しみに捕われる
時間が悲しみを駆逐し
虚無が満ち足りた幸せに変わっていくのは何時だ
君が抜け出した時間の流れに
僕と君の分身はいまだ取り残されて
これから何度も大きな渦に飲み込まれる
君はそれをどこから見る
生まれくる時の波にさらされ
君を失った痛みがいやされる時
すべての愛情が 新しい命に注がれる
その瞬間を求めて
僕の旅は続くのか
君を失った事を
忘れる事などないと云ったが それが嘘だということは分かっている
なぜなら 君はたばこは吸わなかったし 居酒屋にもいかなかった
君の思い出が 少しずつ失われている事を
本当は認めなければならないのだ
だが もう少し君の事を思いたい
それが記憶の残骸だと気付いていても
僕の自己満足な愛のかたちとしても
君を愛していた 僕の歴史の確認として
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