上京物語
髪を切りました
十年伸ばした髪を切りました
短くなった私の髪を
父さんは不機嫌そうに
母さんは不安そうに見つめています
東京に出ると決めた日は
十年前の夏でした
暑くて 暑くて たまらない
とても長い夏でした
東京への憧れは
ひかりに集まる虫と同じで
父さんにだって
母さんにだって
私自身にも止めることできません
言ってしまえば運命で
すでに決まったことなのです
ふる里を捨てるわけではありません
改札を通ったときに
きっと感じる寂しさは
嘘ではないと信じるし
帰ってきたいと思うはず
明日は私はここをたつ
希望に溢れたあのまちへ
私をきっとまっている
誰かが住んでるあの街へ
肩迄髪がのびたころ
必ずここに戻ってきます
その日がくるまで父さんも
無理をしないでまっててください
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